【拉致問題は”提起”】:米朝首脳会談の要点をわかりやすく

さてさて、読者リクエストがありましたので昨日から日英のメディアを見まくってまとめました。

昨日の米朝首脳会談の要点と、それが日本の近い将来にとって持つ意味を考えてみます!

※以下、インターネット資料はいずれも2018年6月13日最終閲覧


訪問ありがとうございます!記事の更新等はTwitterでお知らせしていますので、よろしければフォローよろしくお願いします→ @academicocktail

合意内容

両者が文書で合意したのは次の4点でした。

1. The United States and the DPRK commit to establish new U.S.-DPRK relations in accordance with the desire of the peoples of the two countries for peace and prosperity.
(アメリカ合衆国と北朝鮮は、平和と繁栄を求める両国の人々の願いのために新しい関係の構築に取り組む)

2. The United States and the DPRK will join their efforts to build a lasting and stable peace regime on the Korean Peninsula.
(朝鮮半島の持続的で安定した平和体制を構築するため、共に努力していく)

3. Reaffirming the April 27, 2018 Panmunjom Declaration, the DPRK commits to work toward complete denuclearization of the Korean Peninsula.
(2018年4月27日に発表した「板門店宣言」を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全非核化に向けて努力する)

4. The United States and the DPRK commit to recovering POW/MIA remains, including the immediate repatriation of those already identified.
(身元の確認された人の速やかな返還を含め、戦争捕虜や行方不明者の帰還に向けて取り組む)

出典:英文はRead the full text of the Trump-Kim agreement here | CNBC, 和文は「朝鮮半島の完全非核化」米朝首脳会談の合意文書に盛り込む。| ハフポスト

いくつか、必要と思われるところを補足説明します。

米軍は朝鮮半島から撤退の見込み

2. 「朝鮮半島の持続的で安定した平和体制を構築」に関連してですが、会談の中で、トランプ大統領は米軍を朝鮮半島から撤退させる意向を示しました。

Trump outlined a vision of an Asian geopolitical landscape that included a significantly reduced US military presence, promising to end joint US-South Korean military exercises and eventually withdraw US troops from the Korean Peninsula.

出典:Trump, Kim Sign Document To Denuclearize The Korean Peninsula

管理人訳:トランプは、アメリカ軍の存在感を大幅に縮小することを含めたアジアの地政学的概観を示し、米韓の合同軍事演習を中止すること、および最終的にはアメリカ軍を朝鮮半島から撤退させることを約束した。

もしこれが実現されるのであれば、良くも悪くも日本近辺の国際関係が大きく変化することは間違いないでしょう。

「板門店宣言」とは?

3.「「板門店宣言」を再確認し…」について。説明するまでもないかもしれませんが、「板門店宣言」とは、今年4月の南北首脳会談で北朝鮮と韓国により出された声明のことです。

正式名称は「韓半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言」といい、その名の通り南北の和解や朝鮮半島の平和に向けて両国が協力していくことが宣言されました。

1 南と北は、南北関係の全面的で画期的な改善と発展を実現することで、途絶えた民族の血脈をつなぎ、共同繁栄と自主統一の未来を早めていくだろう。

2 南と北は、朝鮮半島で先鋭化した軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するため共同で努力していくだろう。

3 南と北は、朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築のため、積極的に協力していくだろう。

出典:板門店宣言全文 | 日本経済新聞

細かい部分を見ると、「差し当たって、今年8月15日を契機に離散家族・親戚の再会を行うことにした」などと今後の具体的な行動も含まれているのが特徴的です(出典は同上)。

「戦争捕虜や行方不明者の帰還」とは?

もう70年近く前のことになりますが、1950年代の朝鮮戦争の米軍捕虜を北朝鮮は未だに返還していません。

同戦争中に亡くなったアメリカ兵のうち、7700人(の遺体)が未だに行方知らず(unaccounted for)であり、真相はわかりませんが、アメリカの非営利組織The Veterans of Foreign Wars of the US(VFW)の見積もりによれば5300人の遺骨は現在も北朝鮮にあるとのことです(参考:Trump Wins Pledge From Kim To Return Remains Of Americans From Korean War)。

こうした状況を踏まえて、今回の会談では「身元の確認された人の速やかな返還を含め、戦争捕虜や行方不明者の帰還に向けて取り組む」ことが合意されました。

今後日本がなすべきこと

以上が、主に会談の当事国であるアメリカと北朝鮮に焦点を当てた解説でしたが、ここで会談が日本に及ぼした影響について触れておきましょう。

拉致問題はどうなった?

トランプ大統領は、記者会見で拉致問題について問われ、「もちろん日本の安倍総理が非常に重要だと考えている問題だ。非核化の問題もそうだと思うが、安倍総理にとってとても重要な点だ。この点に関しても、提起した」と答えました(出典:米朝首脳会談、トランプ大統領「拉致問題についても提起した」| ハフポスト)。

そう、提起はしてくれたのですが、あくまで提起は提起です。合意文書にはもちろん含まれていません。そもそも、拉致問題はアメリカの利害に直接関わらない話です(間接的には、日本に対する交渉のカードとして有効だと思われますが)ので、拉致問題解決のためには今後我々自身が積極的に働きかけていく必要があります。

アジアにおける軍事バランス

今回の会談が東アジアの国際関係に及ぼす影響はいろいろあると思いますが、可能性としてパッと考えられるのは次の2つでしょう。

1. アメリカ軍が朝鮮半島から手を引く(前節参照)。

→東アジアにおけるアメリカの軍事的影響力が縮小。

日本とアメリカの軍事的結びつきが弱くなる。

2.北朝鮮とアメリカが仲良くなった。

北朝鮮が、今まで依存し続けてきた中国に対する発言力を強める。

2つともあくまで可能性の話ですが、とくに1のような結果が近いうちに生じ得るのだということは、頭に入れておくべきだと思います。

おわりに:日本にとっては”これから”

今回は、米朝首脳会談の要点をまとめた上で、拉致問題については我々日本が積極的に解決に乗り出していくべきであること、日米の安全保障的結びつきが弱まる可能性があることについて述べてきました!

昨日の会談では具体的なアクションについては殆ど合意されていないこと、トランプ大統領も金正恩氏もトリッキーな動きをする人物であることなどから、今回の会談が今後の国際情勢にどういう影響を及ぼしていくかは現時点では全く不透明です。しかし、いずれにせよ、我々日本としては、今後自国の振る舞いを考えて行動を起こしていかなければならないことは間違いないでしょう。拉致にせよ安全保障にせよ、日本にとっては”これから”自分で動いていくべき問題であるとえます。


最後までお読みいただきありがとうございました!記事の更新等はTwitterでお知らせしていますので、よろしければフォローお願いします!→ @academicocktail

資料案内

首脳会談について知る上で特に有用だった記事のリンクを貼っておきます。

◯合意文書
(英文)Read the full text of the Trump-Kim agreement here | CNBC
(和文)「朝鮮半島の完全非核化」米朝首脳会談の合意文書に盛り込む。| ハフポスト

◯今回の会談が関係諸国(アメリカ、北朝鮮、韓国、日本、中国)に及ぼす影響
Trump, Kim Sign Document To Denuclearize The Korean Peninsula

◯アメリカ捕虜について
Trump Wins Pledge From Kim To Return Remains Of Americans From Korean War

スポンサーリンク

シェアする

フォローする

スポンサーリンク