チュニジア抗議デモに見る大衆運動の効能と限界

こんにちは!今日は文献ではなく現実世界で起きていることについて記事を書きました。今年1月にチュニジアであったゴタゴタについて書きます。

(以下、ニュース記事の訳は管理人によります)

チュニジアってどんな国?

チュニジアは、北アフリカに位置する共和制の国家です。人口は一千万人あまりで、イスラム教スンニ派を基調としています(チュニジア基礎データ | 外務省 – Ministry of Foreign Affairs of Japan)。

この国に関して言及すべきことは何と言っても2011年のジャスミン革命(Jasmine Revolution)でしょう。20年以上も独裁政権を継続していたベンアリ大統領の政権が、民衆の運動によって打倒されました。この革命は、シリア、エジプトなど周辺の国々に波及し、アラブの春(Arab Spring)と呼ばれる一連の民主化革命を引き起こすことになります。

再び活発になる抗議デモ

さて、民衆の力によって独裁政権が打ち倒されたチュニジアですが、最近になってまた政府への抗議デモが起こっています。

今度は、政府の財政政策に反対するデモです。

チュニジアは2015年にテロの襲撃にあっており、以来、観光業を中心に経済が打撃を受けています。この状況を立て直そうと政府は、自動車、酒、携帯電話等さまざまな財・サービスに対する付加価値税(value-added tax、日本の消費税とほぼ同義)を引き上げました。チュニジアは現在インフレにも苦しめられており、そうした状況で行われた増税に対して、チュニジア市民は抗議デモを行いました。

1月、激しいデモが何度も行われ、700人以上が逮捕されるほか、警察との衝突によって1人が死亡してしまっています。

結果

政府は13日に、民衆の意向を汲んで貧困層の補助を目的とした改革を約束しました。その後デモの報道がないことを見ると、とりあえず一旦民衆の不満を沈めることには成功したようです。ただ、デモ隊が不満を表明していた増税に関してはそのまま実施される方針とのことなので、まだどうなるかはわかりません。

大衆運動の効能

2011年のジャスミン革命において、民衆はデモを行ってベンアリの独裁政権を打ち倒しました。これは、「政府が自分たちの幸福を妨げる際にはこれに抗議していいんだ」という民衆の主権者としての自負を育てるのに非常に効果的だったと考えられます。

デモのような下からの作用によって民主化がなされた場合、その後も民主政治が機能しやすいということは、学説上でも有力な見解です(例:Chenoweth and Stephan, 2011)。

チュニジアでは、民主化革命が民衆の手で遂行されたことにより、このような政府に対抗して権利を主張する空気が出来上がったのだと考えられます。

抗議デモが抗議デモを呼び、民主的政治を健全に機能させ続ける。これは、今回のようなデモ活動が民主政治に及ぼすポジティブな作用だと言えるでしょう。

大衆運動の限界

今回、政府から貧困対策に関する改革を引き出すことには成功したものの、増税等の当初予定されていた緊縮策は予定通り遂行されることになりました。これはこれでよかったのかもしれませんが、ニュース記事を読んでいて、少し今回のような大衆運動がもたらす効果には限界があるなとを感じました。

大衆運動の弱点の1つとして、「政府に変わって代替案を出すのが難しい」ということが考えられると思います。これは、特に、政府がそこまで悪質ではないときに目立ちます。

アラブの春では、代替案などを出す必要はありませんでした。ベンアリがとんでもない人権侵害をしていて、とにかくみんなそれを倒したかった。倒したあとのことは倒してから考えればいい。このような原理で、独裁者ベンアリという共通の敵に対峙する形で、民衆がまとまることができたのです。

ですが、今回は、少なくとも政府は「国民の生活を害しよう」と思って増税に踏み切ったのではありません。チュニジア経済がダメージを受けていて、それを立て直すために何かしらのアクションを取らなければならない、というのが政府が緊縮策を実行した動機です。

中東政治の専門家リセ・ストーム氏(Lise Storm)は、CNNのインタビューに対してこう答えています。

What people are protesting about is something that’s painful but needs to happen,”……”Tunisia really needs painful economic reform.”

出典:Tunisia protests: Hundreds arrested after fourth night of unrest – CNN

2018年3月17日最終閲覧

:「人々が抗議している対象は、痛みを伴いますが、実行されなければならないことです」……「チュニジアは痛みを伴う経済改革を必要としています」

政府としては、いくら民衆に反対されても、何もしないわけにはいかないわけですね。増税あるいは何かしらの代替措置をとらなければどんどん状況は悪化してしまうので。

したがって、民衆がどうしても増税を止めたいのであれば、増税を中止したあとの明確なビジョンを提示する必要があります。そして、おそらくそれは構造的に難しいでしょう。なぜなら、デモ隊は政府や政党と違って、明確な政策目標があって集まった者ではなく、ただ貧困の苦しみを共有し、政府の方針に抗議するというただ一点の利害の一致において集まった集団であるからです。

 Representatives say it is a loosely organized grassroots movement with no leader. Some of its members belong to opposition parties, while others are independent.

出典:Tunisia protests: Why are people taking to the streets? – CNN – CNN.com

2018年3月17日最終閲覧

:(管理人注:デモ隊の)代表が言うにはそれ(注:デモ隊)はリーダーをおくことなくゆるやかに組織された草の根レベルの運動である。メンバーの中には野党の者もいれば、与野党と関係ない人もいる (下線は管理人)

このように、誰が仕切るともなく集まった民衆には、国政に関する明確なビジョンがあるわけでないので、政府と対話して建設的な問題解決に取り組んでいくということは難しいと考えられます。

まとめ

以上をまとめると、「国民全体にとって有害な政府を倒す」のような、デモの目的が必ず国民の利害(ルソー風に言えば一般意志)に叶う場合には、抗議デモの威力は抜群である一方、政府が頑張って国の経済や政治状況を改善しようとしているときには、政府と合理的な対話ができない抗議デモはその機能に限界があるということが示唆されるでしょう。

チュニジアの他にも、シリア、エジプト、リビアなどのアラブの春で民主化した国々は、未だに権威主義への逆戻りや内戦、テロの脅威などの政情不安に脅かされています。政治学者の卵としてまだまだ未熟な私ですが、将来こうした状況に際してどう対処していくべきなのかを当事国内外の様々な立場な方々に提言していけるよう、今後も事実と理論の両方を貪欲に学んでいきたいと思います。

参考資料・文献

ニュース記事はいずれも2018年3月17日最終閲覧

Tunisia plans social reforms in wake of protests – CNN – CNN.com

Tunisia protests: More than 770 arrested after days of unrest – CNN – CNN.com

Tunisia protests: Why are people taking to the streets? – CNN – CNN.com

Tunisia protests: Hundreds arrested after fourth night of unrest – CNN

Erica Chenoweth, Maria J. Stephan “Why Civil Resistance Works: The Strategic Logic of Nonviolent Conflict (Columbia Studies in Terrorism and Irregular Warfare),” Columbia University Press, 2011

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