リーダーシップが生存条件になりつつある気がする

こんにちは!以前紹介しました”Soft Power: The Means To Success In World Politics“の著者ジョセフ・ナイ教授(1937-)の別の著作を読んでいきます!今回のテーマは国際政治ではなく「リーダーシップ」です(上記の著作についてはこちら:いじめっこを止めるには?ジョセフ・ナイ・『ソフト・パワー』)。

今回紹介するのはナイが”Soft power”後に出版した”The Powers to Lead“です。筆者自身のソフト・パワーに関する考察、そして長年に観察を渡って続けてきたアメリカ大統領の事例をもって、「今の時代、リーダーに必要な力とは何か」という問いにそって主張が展開されます。何人ものアメリカ大統領を観察し分析してきたナイは、リーダーシップをどのように捉えているのでしょうか?

(ちなみに今回はいつもに比べて「論評」より「意見」っぽくなります。言い換えると「である」より「べき」が多くなります)

リーダーに必要なスキル

ナイは、リーダーが持つべき”critical skills”(必須スキル)として、以下のものをあげています。

<リーダーが持つべき必須スキル>

• Emotional Intelligence (感情知性)

• Communications(コミュニケーション能力)

• Vision(方針を持っていること)

• Organizational Capacity(組織運営能力)

• Machiavellian Political Skills(マキャベリズム的政治スキル)

• Contextual Intelligence(文脈を読む知性)

ナイは、これらの能力について、主にアメリカ大統領の例をたくさん出しながら、どのようなリーダーが望ましい結果を創出してきたのかを考察しています。

さて、”Powers to Lead”(リードする力)という文脈で挙げられているこれらの能力ですが、読んでみて、「これら全部、リーダーに限ったことではないのでは?」と思いました。一つずつ簡単に検討します。

Emotional Intelligence (感情知性)

Ability to manage relationships and charisma

Emotional self-awareness and control

出典:Joseph S. Nye Jr. “The Powers to Lead,” 2008, Oxford University Press, pp.83

訳:人間関係および自分のカリスマ性を管理する能力。感情面における自覚と統制。
一言で表すのはとても難しい概念なのですが、「自分や他人の気持ちをよく理解すること」に基礎を置く様々な能力のことを指すと私は解釈しました。
周囲の人々の感情に共感し、良い人間関係を築いて、ついてきてもらう。また、様々な状況に際して自分の感情がどのように反応する傾向にあるのかを理解しておいて、その時々で自分を律する力。
さて、これが組織のリーダーのみに必要な力ではないことは納得していただけるでしょう。他人の気持ちを理解して人間関係を気づけなければ仕事はできませんし、自分の感情を律する力などは、公私問わずあらゆる場面で誰もが必要とするものに違いありません。

Communications(コミュニケーション能力)

Persuasive words, symbols, example

Persuasive to near and distant followers

出典:同上、pp.83

訳:説得的なことば、シンボル、模範。身近なフォロワー(管理人注:リーダー以外の人。リーダーについていくべき人。部下)と遠くのフォロワーそれぞれを説得できること。

人を説得する力です。弁論や、視覚的イメージ(好印象を与える服装など)、また自らの行動をもって、人の心に訴えかける能力のことを指しています。

こちらも、組織を率いる率いないにかかわらず必要な力だと思います。誰もがマーティン・ルーサー・キング・ジュニアのような世界を変えるスピーチをするのではないにしろ、営業、交渉、教育など、誰もが一生のうち多かれ少なかれ携わるであろう類の業種には必須のスキルです。

Vision(方針を持っていること)

Attractive to followers

Effecive (balance ideals and capabilities)

出典:同上、pp.83

人にとって魅力的であり、かつ、理想と実現可能性のバランスが取れた効果的な行動方針を持っていることを指します。

人にとって魅力的であるビジョンは、組織の上に立つ人に限って必要なものかもしれません。しかし、少なくとも自分自身のビジョンは、みんなが持っているべきだと思います。今の時代、会社に入って上に付き従っていれば安泰ということでもない以上、個々人が自分の中長期的な行動方針をもっていることは生存のために不可欠です。

Organizational Capacity(組織運営能力)

Manage reward and information systems

Manage inner and outer circles

出典:同上、pp.83

訳:報酬や情報流通の仕組みを管理する。手近な部下とそうでない部下の両方を管理する。
こちらはさすがに、リーダーないしマネージャーという立場にいる人が積極的に鍛えるべき能力かもしれません。しかし、情報共有システムの問題はどの組織でも必ず課題になってくるところである以上、リーダー以外の人も積極的に問題意識を持っておくべきところではあります。

Machiavellian Political Skills(マキャベリ的政治スキル)

Ability to bully, buy and bargain

Ability to build and maintain winning coalitions

出典:同上、pp.83

訳:いじめ、買収し、交渉する能力。勝利連合(注:議会など多数決において勝てるグループ)をつくり、維持する力。
ルネサンス期イタリアの政治学者マキャベリが『君主論』で説いた考え方です。リーダーたるもの時に汚い手段も使うべきという理論ですね。必須のスキルなのかはわかりません。できる人とできない人がいる気がしますが、ときにこのような手段が有効であると言うことは頭に入れておくべきでしょう。

Contextual IQ(状況を読む知性)

Understand evolving environment

Capitalize on trends (“create luck”)

Adjust style to context and followers’ needs

出典:同上、pp.83

訳:進展していく環境を読む。トレンドを利用する(幸運を作り出す)。行動流儀を状況とフォロワーが求めているものに合わせる。

状況に合わせて最適な行動をとる力です。刻々と変化していく状況を読んで、最高のタイミングで行動を起こし、自分のスタイルを周囲に適応させて変化させていく。

これはもう、一人の人間、主体的な一個体として、リーダーシップに全く関係なく必要な姿勢でしょう。現代社会はとにかく何が起こるかわからない。常に最新の情報にアンテナをはって、自分の行動スタイルを更新していく必要があります。

まとめ:”Powers to be human”

以上のように、ナイがリーダーの必須スキルとしてあげている能力は、社会に生きる人間として誰もが持っておくべき能力であるというのが私の意見です。そして、この傾向は今後ますます強くなっていくものでしょう。

「自由人-奴隷」→「地主-小作人」→「資本家-労働者」の関係が今後「人間-人工知能」の関係に移り変わっていくのだとすれば、今後、いわば人間である以上は誰もが自分以外の実体を動かす側に回らなければならない。そうなってくると、もはやナイが”Powers to lead”(リードする力)として説明している力は、”Powers to be human“(人間であるための力)であるとは言えませんでしょうか。

以上、就職活動すらしていない世間知らずの大学生による一意見でした!

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