【各国と比較】成人年齢引き下げにメリットはあるか?

こんにちは!読者リクエストがありましたので、今回は成人年齢引き下げの民法改正案について考察します!とくに文献の紹介などはありませんが、タイムリーな話題であり読む価値のあるものではあるかと思いますので、どうかお付き合いください!


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刻々と進む民法改正審議

成人年齢の18歳引き下げの審議が着々と進んでいます。25日の日本経済新聞の報道によれば、2022年4月の施行を目指し、審議が進んでいるとのことです。

引き下げをめぐっては、賛成・反対両方からの意見が数多く提出されており、議論はまだまだ決着しそうにありません。

引き下げをめぐっては、若年層の社会参画が進むことを期待する一方、新たに成人になる18、19歳を狙った悪質商法などが増えるのではないかとの懸念がある。公明党や野党からは消費者被害への懸念から慎重論も出ており、被害の拡大を防ぐ対策が焦点になる。政府は16日に設置した関係省庁の連絡会議で、若年者の消費者被害対策を検討している。

出典:成人年齢18歳に引き下げ 民法改正案が審議入り | 日本経済新聞

若年層に権利を広げる一方で、消費者トラブルなどのリスクも付与してしまう今回の法改正案については、どちらに決まるにせよ多くのメリット・デメリットが伴います。したがって、「引き下げるべきか否か」という議論と同時に、「引き下げるとしたら(引き下げないとしたら)リスクやデメリットにどう対処するか?」ということについても真剣に考えるべき、難しいイシューです。

さて、「成人年齢を引き下げるべきか?」という問いそのものに関していえば、私は賛成の立場です。若い世代が政治・社会参画を積極的に行っていくべきだと考えているからです。

とはいっても、数多くの批判や疑問が提出されていることから明らかなように、引き下げるにあたっては、検討しなければならないことが数多くあるのも事実です。そこで本記事では、「成人年齢を引き下げるにあたって何に注意しなければならないか」という問いに沿って議論を進めていきたいと思います。

前提:なぜ成人年齢を引き下げるのか?

まずは、そもそも今回の改正案について何が争点になっているのかを整理します。

なぜ、成人年齢を引き下げるという話が出ているのか?以下、国会の資料よりの抜粋です。

<成人年齢引下げの意義・必要性>

・若年者の社会参加、自立の促進

・若年者の精神的成熟度等から見た必要性

・若年者に親の同意なく1人で契約することを可能にする必要性

・親権の対象となる年齢を引き下げる必要性

・選挙年齢と民法の成年年齢を一致させる必要性

・諸外国の成年制度と一致させる必要性

出典:民法の成年年齢引下げの意義と課題 – 参議院より管理人作成

という形で、ざっくりと6つの論点が提出され、それぞれについて賛成意見と反対意見が存在しているというのが現状です。

ところで、6番目に「諸外国の成年制度と一致させる必要性」とある通り、世界では18歳以上を成人とする制度が一般的です。日本における法改正を検討するにあたってヒントにするため、一度、諸外国における成人年齢の動向について見ておきましょう。

諸外国で成人年齢引き下げが行われた経緯

[図]世界各国の成人年齢(2008)全187の国・地域。括弧内は総数。
出典:世界各国・地域の選挙権年齢及び成人年齢より管理人作成。

[図]からも明らかな通り、現状として、世界の大多数の国・地域では18歳を成年としています。日本のように20歳を成年と定めているのは全体の4%(8ヶ所)しかありません。

しかし、実のところ、現行18歳以上を成人としている国の中には、以前は21歳または20歳以上を成人と定めており、法改正を経て18歳がボーダーラインになっているところが少なくないのです。

法務省の調査によると、少なくとも以下の国々は、少し前まで20歳ないし21歳以上を成人としていました。

<1970~2000年ごろに(21or20歳)→18歳へ成人年齢を引き下げた国の一覧>

アイルランド、アメリカ、イギリス、イタリア、オーストラリア、オランダ、キューバ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スイス、チリ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー(24歳→18歳)、フィンランド、ブラジル(2001年)、フランス、ベルギー、ポルトガル、メキシコ、モンゴル、ルクセンブルグ

出典:諸外国における成年年齢等の調査結果より管理人作成

※上資料は世界中の全国家のデータを網羅していないため、実際には他にもこのような法改正を行った国家が存在する可能性があります。

なぜ、これほど多くの国で、成人年齢が18歳に引き下げられたのか?

いくつかの国における法改正の背景を紹介します。

◯イタリア(1975年、21歳→18歳)

①より若年層に国政選挙及び地方選挙への選挙権を与えるためであり,選挙権年齢が憲法において「成年年齢」とされていることから,成年年齢の引下げにつながった,②時代とともに,もたらされた風習の変化や若年層の心身の成熟の進化等も背景にあった。

出典:諸外国における成年年齢等の調査結果(下線は管理人)

◯オーストラリア(1970-74年、21歳→18歳)

1960年代から70年代にかけて,社会は大きな変革期を迎えており,若い人の多くがベトナム戦争に派兵され,多くの人命が失われ,社会全体が自分たちの声を政治に反映させたいという機運で盛り上がっていたところ,連邦及び各州において,Law Reform Commissionと呼ばれる裁判官,学者などから構成される機関が設置され,そこで成年年齢,刑事責任年齢,飲酒・喫煙年齢などが議論された。Law Reform Commisionは報告書を各政府に提出し,各政府の議会において議論がされた結果,各種の法律が制定された。

出典:同上(下線は管理人)

◯キューバ(時期不明、21歳→18歳)

……反バティスタ反乱軍や革命後の識字運動等において,21歳よりも更に年少の若者たちが,政治的主役を果たしてきたことなどを背景。

出典:同上(下線は管理人)

◯ルクセンブルク(1970年、21歳→18歳)

戦後,社会が変化し,若者の社会参加に対する要求が高まり,これを考慮する必要があった。特に,1968年にフランスで若者たちが先頭にたって起きた「5月革命」の思想的影響がルクセンブルク社会にも及んだことが大きい。

出典:同上(下線は管理人)

このように、18歳以上の若者が実質的に政治や社会を主導する能力ないし意欲があることが見受けられた結果、引き下げが行われたというのが、諸外国における法改正の主要な理由の一つであることがわかります。

もっとも、リンク先を読んでいただければわかる通り、その他の理由もいろいろとあるのですが、「18歳以上を成人とみなすのが実情に合っているから法改正が行われた」という経緯が、諸外国における現行の成人年齢設定の背景にあることは間違いありません。

法改正で実情は変えられるのか?

ここで日本に立ち戻ってみましょう。成人年齢を引き下げる理由として、国会は以下のような説明を与えています。

・成年年齢を引き下げることは、若年者が将来の国づくりの中心であるという国としての強い決意を示すことにつながる。少子高齢化が進行する日本の将来を支える若年者には、社会・経済において積極的な役割を果たすことが期待され、若年者の社会への参加時期を早めることで、若年者や20代前半の若者に大人としての自覚を促し、社会に大きな活力をもたらすことにつながる。

出典:民法の成年年齢引下げの意義と課題 – 参議院(下線は管理人)

もちろん、上記以外にも多くの理由はあげられているのですが、法改正の動機の一つとしてこのような意図があることは事実です。

さて、ここだけを見ると、前節で紹介しました諸外国における法改正とは全く逆の作用が働いていることがわかります。すなわち、諸外国では「実情に合わせて法律を改正しようとしている」のに対し、日本では「法律の改正によって実情を変えようとしている」のです

もう少し噛み砕いて説明しますと、諸外国(イタリア、オーストラリア、キューバ、ルクセンブルク)においては、

18歳勢「わいらしっかりしてるし、成人と認めてほしいンゴ」

政府「りょ」

という流れになっているのに対し、日本では、

政府「しっかりしてほしいからお前ら明日から成人な」

18歳勢「!?」

という形で、法改正と実情(=若者の積極的な社会参画)が逆に働いていることがわかります。

これ自体が悪いことであるとはいいません。問題は、「18歳以上を成人にしたが若者の意識改革には繋がらなかった」という事態がありうることです。18歳の誕生日を迎えた新成人が、途端に社会参画に意欲的になったり責任感を持ったりするということはあまり想像できません(個人的な感想にはなりますが、私が20歳になったとき、自分の中に起こった変化は「お酒を飲んでみたい」という意識改革だけでした)。

そうなると、「若年者が将来の国づくりの中心であるという国としての強い決意を示すことにつながる」という政府の意図は実現しないまま、クレジットカード詐欺の頻発などといった、法改正による弊害のみが実現してしまうことになりかねません。

先ほどの国会資料は次のように文を続けています。

・成年年齢の引下げと併せて若年者が「大人」の自覚や能力を得るような教育、その他若年者の自立を援助する様々な施策を実行していくことで、若年者の自立を支え、 若年者に社会の構成員として重要な役割を果たさせていくことが可能となる。

出典:同上

「成年年齢の引下げ」と「若年者の自立を援助する様々な施策」の間に論理的な条件関係はありません。政治教育でも社会教育でも消費者教育でも、18歳を形式的な成人とせずとも実行可能な施策のはずです。

成人年齢引き下げ自体はやってもいい、むしろやった方がいいことだとは思います。ですが、それに先立って大事なのは、若年層の実質的な社会参画意識・能力を高めることではないでしょうか?成人年齢の引き下げによって、若年層は権利を得るとともにリスクを負います。そのとき、権利を使う能力・意欲が育っていなければ、リスクのみが顕在化してしまうことになりかねません。

まとめとして、冒頭の問題提起に戻ります。今回は、「成人年齢を引き下げるにあたって何に注意しなければならないか」という問いについて考えてきました。

以上の議論をまとめ、

法改正によって若者の自立を促したり社会参画意識を変えることができるとは限らないという点に注意したい。法改正の利点を最大化するためにも、まずは若年層の意識や能力を育てる実質的な政策を、形式的な法改正よりも優先すべき」

というのが、この問いに対する私の回答です。

おわりに

本日は読者リクエストに沿って時事ネタを取り上げてみました!こんな感じで、なるべくリクエストには答えていこうとは思いますので、気になるネタのある方はいつでもTwitterのDMやコメント欄等でお気軽にご連絡ください!(理系分野など全く専門外のネタは苦しいですが、リクエストを受けてから判断しますので、お気軽に!笑)


最後までお読みいただきありがとうございました!記事の更新等はTwitterでお知らせしていますので、よろしければフォローお願いします!→ @academicocktail


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