人間に自由意思はある?カント哲学が出した答えとは?

本日は、「人間に自由意思はあるのか」という議題について、ドイツの哲学者エマニュエル・カントが出した答えを紹介したいと思います。


訪問ありがとうございます!記事の更新等はTwitterでお知らせしていますので、よろしければフォローお願いします!→ @academicocktail


結論:人間に自由意思はある

結論から言うと、「人間に自由意思はある」というのがカントの答えです。

ですから、例えば殺人を犯した人が、子供の頃にいじめを受けていて性格が歪んだとか、仕事でどうしようもないくらいストレスを抱えていたとか、そんな事情があったとしても、罪人は罪人として裁かれるべきだということになります。

ただ、そうはいってもやはり、人間の意思決定って、それまでの家庭環境とか、人間関係とか、もっというと遺伝子的な要因などによって左右されそうに思えませんか?

どんなにひどい過去を背負ってきた人であっても自由意思をもって自分の殺人を止められるというのは、正しいのでしょうか?

このような反論に対し、カントは彼固有の得意技を使って応答します。

フェノメノンとヌーメノン

カントの哲学上の得意技は、世界を2つに切り分けるというものです。

彼は、人間は2つの世界に同時に属している存在と考えます。

すなわち、自然法則が支配する現象界と、道徳法則が支配する叡智会可想界)です。

そして、前者に属する人間をフェノメノン、後者に属する人間をヌーメノンと呼びました。

そして、「フェノメノンとしての人間に自由はないが、ヌーメノンとしての人間には自由がある」というのがカントの答えです。

<カントの批判哲学における人間の2つの側面>

フェノメノン:自然法則に従う現象界に属する。自由がない。

ヌーメノン:道徳法則が支配する叡智会に属する。自由がある。

そして、カントにとって人間が持つ自由とは、「道徳法則に従う自由」のことでした。

より具体的に言うと、「欲望に抗ってまでも正しいことをする自由」が、カントが捉えた人間の自由です。

ちなみに、ここでいうフェノメノン・ヌーメノンは、下記の記事で解説しました現象・物自体とほぼ同じ意味です。

科学はなぜ可能なのか?カント哲学の「物自体」をわかりやすく

『羅生門』で例えてみる

説明は以上になりますが、もう少しイメージを膨らませたいという方のために、具体例をあげたいと思います。

芥川龍之介『羅生門』で説明します。

まずは、読んだことのないという方のために簡単にあらすじを。

『羅生門』

背景:平安時代、飢饉や竜巻などの自然災害で荒廃した京都の羅生門。

あらすじ:

主人公の「下人」は、仕えていた主人から数日前に解雇され、身寄りも食料もなく途方にくれていた。いっそ盗賊になろうとでも思うが、良心の呵責からなかなか実行できない。

たまたま見かけたおばあさんが、売り物にするために若い女の遺体から髪を引き抜いていた。

おばあさんの残虐行為に憤る下人だったが、「自分もそうしなければ、餓死する体なのだ」というおばあさんの言葉を聞いて、自分もまた、生き延びるための行動をとる決断をし、おばあさんの服を剥ぎ取って去る。

さて、彼が最終的におばあさんの服を剥ぎ取った行動。これは、「自分が食料を得て生き延びたい」という生物的本能に従った行為ですので、自然法則に支配されたフェノメノンとしての行為だと考えることができます。

しかし、そこに至るまでの過程において主人公は、「自分が生き延びるためにであれば人道に反することをしてもいいわけではない」と考えて葛藤していました。これは、道徳法則に従おうとするヌーメノンとしての彼の考え方であると言えます。

結果、下人はフェノメノンとしての行動をとりましたが、少なくともヌーメノンとして道徳にかなった行為を行う自由があったということは、『羅生門』でも描写されているといえるでしょう。

動物であれば、倫理観と葛藤することはなく、欲望に従って自分の保身をはかるかもしれません。それに対し、理性を持つ人間は、自然法則に抗ってまでも「正しいことをしたい」と思い、そして行動する自由があるということです。

自然法則に規定された欲望に抗う自由。これが、カントが人間に認めた自由意志でした。

おわりに

今回は、「人間の自由意志」についてのカントの考え方を紹介しました!

神の存在証明などにおいてもそうでしたが、カントは、それまでの哲学上の難問を、世界を2つに分けることによって解決してきました。

答えの出ない問いにぶつかった時、「ある意味ではイエス。ある意味ではノー」と切り分けて考えるという方法は、日常生活でも十分応用可能なものかもしれませんね!


最後までお読みいただきありがとうございました!記事の更新等はTwitterでお知らせしていますので、よろしければフォローお願いします!→ @academicocktail

スポンサーリンク

シェアする

フォローする

スポンサーリンク