フェルマーの最終定理から見える数学の難しさ

続きはwebで!

よく、上のような文言を使ってウェブサイトに誘導するCMがありますよね。こういう、少し面白そうというところをチラ見せしてもっと奥深くに誘導するのは、人々の興味をそそるのにとても有効な手段であると言えます。

ところで、「続きはwebで!」と言ってすごく興味深いことを喋った後、webを作らないまま死んでしまった人がいるとしたら、すごく意地悪だと思いませんか?

今回は、実際に、これと似たようなことをして、学会を360年もの間学会悩ませてしまった一人の数学者について書きたいと思います。

※2018年3月1日に公開した記事ですが、同年3月28日に一部修正しました。

フェルマーの最終定理とは?

フェルマーの最終定理(Fermat’s Last Theorem)は、数学上の非常に有名な問題で、すでに多くの本やサイトに書かれていますが、あたらめて当ブログを読んでくだっている方に紹介したいと思います。

この問題は、17世紀の数学者フェルマー(1607-1665)が提唱して以来360年の間未解決であり続け、ついに1995年にオックスフォード大学・プリンストン大学の数学者アンドリュー・ワイルズ氏(1953-)によって解決されました。

フェルマーは、厳密には数学者ではなく裁判官で、空き時間に趣味で数学を研究していました。とくに整数論に興味を持ち、自分で問題を立てては、新たな定理を証明し、ノートに書くことを戯れとしていました。

彼は多くの問題を作っては自分で解いていましたが、1つ、フェルマーが生前に解答を残すことなく謎に終わった問題がありました。それが、あとにフェルマーの最終定理と呼ばれることになります。以下にその内容を説明します。

おさらい:三平方の定理

フェルマーの最終定理は、日本では中学校で学習する「三平方の定理」または「ピタゴラスの定理」(Pythagorean theorem)の延長線上にあります。

これは、次のような直角三角形があった時、辺の長さにはa2 + b2 = c2という関係が成り立つ、という定理です。

例えば32 + 42 = 52のように、(ある数の二乗)+(ある数の二乗)が(他の数の二乗)になるというのはよくあります。

フェルマーの最終定理とは

問題は、これが3乗以上で成り立つのか、ということです。
13 + 23 = 1 + 8         = 9   ←なんの数の3乗でもない
33 + 43 = 27 + 64     = 91   ←なんの数の3乗でもない
53 + 63 = 125 + 216 = 341   ←なんの数の3乗でもない
    ・
    ・
    ・

のように、いくら試して見ても成り立ちそうにはありません。

この問題に関して、フェルマーは、3乗だけでなく、「3以上の全てのべき乗について、ある2つの自然数の累乗が他の数の塁上なることはない」と主張しました。これがフェルマーの最終定理です。数学的に簡潔に書くと、

と表せます。「上式のような組み合わせのx,y,zが、nが3以上の場合にはないことを証明しなさい」いうのがフェルマーの最終の定理です。

フェルマーのコメントに火をつけられた数学者の戦い

厄介なのは、フェルマーがこの問題を記したノートの端くれに以下のように記したことです。

Cuius rei demonstrationem mirabilem sane detexi. Hanc marginis exiguitas non caperet.
<私はこの命題の真におどろくべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない>

出典:サイモン・シン、青木薫訳『フェルマーの最終定理』、新潮文庫、pp.118

フェルマーはこのように書いた後、この問題に関する言及を辞めてしまいました。結局、彼の死後にこのノートが発見されて、プロ・アマ問わず数多くの数学者の好奇心を刺激することになります。

「ないこと」の厳密な証明:数学という学問

フェルマーの最終定理は、360年もの間未解決でした。

なぜ、中学生にも理解できるこの問題が、こんなにも長い間未解決であり続けたのか?

その理由の1つは、この問題が「ないこと」の証明を求める問題であるからです。何かがある、ということを示すためには、その例を見つけてこればいいのですが、その逆は至難の技です。

私が勉強している国際政治学で例えてみます。

以下の2つの命題を比べてみましょう。

A:民主主義国家同士は戦争することがある
A’:民主主義国家同士は戦争しない

Aを証明するのは簡単です。「当時民主主義国家同士だったアメリカとイギリスは戦争したじゃないか(米英戦争)」と根拠となる事実をもってこれば終了です。

それに対し、A’はどうでしょうか?論理学上は、「〜ない」と言った場合、「何があろうとも過去にも未来にも絶対にない」ことをさします。ですので、主権国家ができてから今までの歴史を全部調べて「ほらないじゃん!」と言ったとしても、今後戦争が起こりえないことを証明したものではないので、A’を証明したとは言えないのです。

フェルマーの最終定理はこれと同じです。すなわち「2つの数のn乗の和が他の数のn乗に等しくなることはない」ということを言っているのですから、どんなに計算して「そんな組み合わせ見つからないじゃないか」と言っても無駄なのです。この、「ないこと」の証明を求めるという点が、フェルマーの最終定理の難しさです。

このように、とても難しい「ないこと」の証明が学問で求められることはあまりなく、現に政治学なんかでは、多少の例外があっても、「民主主義国家同士は(だいたい)戦争しない」と言ったりします(この学説の妥当性についてはここでは触れません)。

ですが、数学においては、この「ないこと」の証明まで厳密に求められます。したがって、一見簡単そうで、計算上当たってそうな問題でも、後世までずっと未解決で残ることになりました。

結末

360年、名だたる数学者の挑戦を退けたフェルマーの最終定理ですが、ついに1995年、アンドリュー・ワイルズによって証明されました。「モジュラー曲線」という現代数学の知識を使って証明されることになります。中学生でも理解できる整数論上の問題が、最新の数学の研究成果によって解かれたことには、なんだかドラマを感じませんか?

おわりに

私は中学生の時にフェルマーの最終定理を知り、面白いと思っていろいろ調べていくうち、上記のような数学的思考法に触れていました。今では私は数学は苦手になってしまって文系に進んでいますが、今回紹介したような数学的な考え方は、今の専門分野(完全に文系)の勉強・研究でも役に立っています。数学は、理系にアレルギーを持っている方にも今一度触れていただきたい世界であります。下の2冊の本なんかはオススメです。

↓こちらはナツメ社さんの「図解雑学」シリーズの一環で出ているものです。この本では、フェルマーの最終定理の解決に焦点を当てながら、数学上の様々なエピソードが紹介されていてすごく興味深いです。ほとんど前提知識なし、中学校の数学があやふやでも読めると思います。

↓少し読書好きな方にはこちらがおすすめです。厳密さを損なうことなく、うまく数学の魅力を伝えています。ノンフィクションながら、ドキドキしながら読める良作です。

【追記】2018年3月28日

本記事は、「ないこと」の証明のために360年間世界の数学界を悩ませてきた問題を紹介しましたが、同じように「ないこと」の証明を要求し、未だに数学者を悩ませている問題もあります。こちらの記事をご参照ください! →小学生が理解でき、数学者が解けない問題「コラッツの予想」


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