フェイクニュースを”ちゃんと”批判するために

こんなニュースがありました。

トランプ流? 比大統領「フェイクニュース」と攻撃姿勢:朝日新聞デジタル

(全文は会員登録しないと読めません)

フィリピンのネットメディア「ラップラー」が、同国大統領ドゥテルテ氏を支持するネット世論の多くが偽のアカウントから拡散していることを調査報道にて指摘し、政権批判を行ったそうです。

それに対して政権は、同社の企業認可を取り消す、大統領府取材を禁止するなどの弾圧を行いました。「フェイクニュースを扇動し、事実をねじ曲げた」というのが政府側の言い分です。

ドナルド・トランプ氏が米大統領に就任してから度々聞く、「フェイクニュース」(fake news)という言葉。メディアに対する政治家のこうした対応のどこに問題があるかを考えてみました。

フェイクニュースとは?

もう聞きなれた言葉ではあると思いますが、あらためてフェイクニュースとは何か、確認しておきましょう。

Fake news is an inaccurate, sometimes sensationalistic report that is created to gain attention, mislead, deceive or damage a reputation. Unlike misinformation, which is inaccurate because a reporter has confused facts, fake news is created with the intent to manipulate someone or something.

出典:What is fake news? – Definition from WhatIs.com

:フェイクニュースは、注意を引いたり、誤解を誘ったり、騙したり名誉毀損を行うことを目的として伝えられる、不正確で扇情的な報道のことである。報道者が事実を誤認しているために生じる誤報とは違って、フェイクニュースは意図的に誰かもしくは何かを操作するために作り上げられる。

虚偽であること、感情を煽ること、何らかの目的をもって意図的に行われることがポイントですね。

フェイクニュースは、それが生み出される動機から分類することができます。主には、企業が商業利益を上げようとして扇情的な記事を書くケース(Commercially-driven)、政府が世論を傾けようとして特定のメディアを支援するケース(Nation state-sponsored)、特定の派閥を支援するために偏った視点から書かれるケース(Highly-partisan)などがあります(Fake news: What exactly is it – and how can you spot it? – The Telegraph)。

冒頭で紹介したラップラーの報道がほんとうにフェイクニュースだったのかはさておき、フェイクニュースは実際にいくらでも存在して問題となっています。例えば、2016年のアメリカ大統領選の際には、マケドニアの青年がウェブサイトを通して扇動的な報道を行い、話題を呼んでぼろ儲けしていました(The city getting rich from fake news – BBC News)。

インターネットが発達して情報が溢れる現代では、このケース見られるような本物の偽報道(笑)も多くあります。しかし、ここ数年、ほんとうに偽物かどうか怪しい偽物も偽物呼ばわりされることが出てきました(ややこしい)。

権力者の間で流行っているフェイクニュース非難

冒頭のニュースのように、権力者がメディアを「フェイクニュース」と呼んで非難する出来事は、トランプ大統領の就任以降多くの国で見られます。

例えば、昨年国際NGO団体のアムネスティー・インターナショナルがインタビュー調査に基づいて作成した、「シリア政権が5年間で13000人の囚人を秘密裏に絞首刑に処した」というレポートに対し、同国大統領は”You can forge any thing these days – we are living in a fake news era”(訳:今の時代何でも偽造できる。我々はフェイクニュースの時代に生きているのだ)と言ってレポートの事実性を否定しました(EXCLUSIVE: Defiant Assad tells Yahoo News torture report is ‘fake news’)。

ほかにも、ミャンマー国軍による同国少数民族ロヒンギャに対する人権侵害について、国家顧問のアウン=サン・スー・チー氏が「そのようなことはない。フェイクニュースだ」と答えたという事例もあります(Rohingya ‘fake news,’ Myanmar official says)。

問題点:どこがどう「フェイク」なのか説明しないと

私は、冒頭に挙げたフィリピンのニュースについて、「真実を突きつけられたからといってメディアを弾圧するドゥテルテは悪だ」とは言いたくありません。なぜならば、ラップラーの方が虚偽を報道している可能性だって十分にあるからです。「真実はいつも一つ」(出典:名探偵コナン)ですが、デカルトが言うように人間はほとんどの場合何が真実であるかを絶対確実に悟ることはできません。

ただ、何か共通の「真実っぽいもの」に基づかなければ、人間社会は成り立たないのも事実です。ですので、対立する2つのテーゼがある場合には、証拠とロジックを積み重ねて、どちらが真実に近いのか(あるいはどちらも間違っているのか)が判断されなければならないでしょう。

ラップラー「大統領は偽アカウントをつくって支持率を盛っている」

ドゥテルテ「偽アカウントなど作っていない。お前はフェイクニュースだ」

この2つのテーゼは両立しないので、少なくともどちらかが誤りであることが証明されて、1つの「現時点で最も真実に近いと思われるもの」に落ち着かなければなりません。

本件における問題点は、この対立矛盾を解消しようとしないドゥテルテ大統領の姿勢にあります。

ラップラーが、証拠を突き出して、「大量の偽アカウントがあるではないか」といっているのだから、政権側としてはその証拠が事実無根であることを示す、あるいは「確かに偽アカウントはあるが、〜〜であるから不正はない」といった具合で別の事実を持ち出すことによって、ラップラー側の立証を崩さなければならないはずです。そうしなければ議論になりません。このように相手の論理を攻撃する批判を行わず、「フェイクだフェイクだ」と非難ばかりされても、何も知らない第三者の我々からすれば、「証拠を提出しているラップラーの方がどちらかというと確からしい」という判断をするしかないのです。ラップラーの主張が絶対に正しいとは言い切れないにしろ、少なくとも何の根拠も持ち出さずに主張している人よりは信用に足るからです。

長くなりましたが、要は、必ずしもドゥテルテ大統領がまちがっていると結論づけることはできない。しかし、どちらかの主張が間違っていると結論づけなければいけない以上、第三者としてはそれらしい事実を提示しているラップラーの主張を正しいとせざるを得ない。「フェイクニュースだ」と主張するからにはその立証が求められるということです(もっとも、それができないから、根拠のない非難や強硬手段に訴えるしかないのかもしれませんが)。

おわりに

今回の記事は、書きながら自分も気をつけようと思うところがたくさんありました(笑)。正直なところ、どうしても面白さやわかりやすさのために事実や文献の内容を少し捻じ曲げたくなることが多いのですが、いつもなんとか事実のままお伝えしているつもりです。もし「事実と違う!」ということがありましたら、遠慮なく(コメントやTwitterのDMで)しばいてくださるとありがたいところです。

参考資料

いずれも2018年3月24日最終閲覧

トランプ流? 比大統領「フェイクニュース」と攻撃姿勢:朝日新聞デジタル

EXCLUSIVE: Defiant Assad tells Yahoo News torture report is ‘fake news’

Fake news: What exactly is it – and how can you spot it? – The Telegraph

Rohingya ‘fake news,’ Myanmar official says

The city getting rich from fake news – BBC News

What is fake news? – Definition from WhatIs.com


最後までお読みいただきありがとうございました!!記事の更新等はTwitterで告知しておりますので、よろしければ下の「フォローする」のアイコンからフォローお願いします〜♪

スポンサーリンク

シェアする

フォローする

スポンサーリンク