【研究する方向け】戦略的非暴力抵抗運動についてまとめ

昨日は戦略的非暴力運動について、政治学に全然関係のない方にも知っておいていただきたいことを紹介しました(下記リンク)。今回は、非暴力抵抗運動で卒論orゼミ論書こっかなと思っている大学の学部生くらいを対象に、非暴力抵抗運動の勉強・研究をするにあたって便利な情報をまとめておきます。

「興味は持ったけれども何から読んでいいかわからない!」という状態から論文を書くのはものすごく膨大な労力を必要としたので、この記事を10分で読むことによってみなさんがサクッと研究には入れたらいいなと思います。

研究目的以外で、なんとなく雑学として非暴力抵抗運動について知りたい方はこちら↓)

【一般の方向け】戦略的非暴力抵抗運動についてまとめ


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理論を学ぶ(文献)

ざっくりと非暴力抵抗運動のイメージを作る

People are in the streets protesting Donald Trump. But when does protest actually work? | The Washington Post

ちゃんとした学術文献ではありませんが、手っ取り早く要点を知りたい場合は、こちらの記事が参考になります。非暴力抵抗運動に関して現在研究者の間でだいたい意見が一致している10個のポイントについて、専門外の方にもわかるように解説されています。

研究の現状と課題を概観する

Nonviolent Struggle Stephen Zunes, Hardy Merriman and Maria J .Stephan

研究の状況についてはこの論文にまとめてあります。いわゆるレビュー論文というやつです。こちらを一通り読めば、「非暴力抵抗運動に関してどんな研究がなされてきて、今何がわかっていないのか」がわかります。

文献を検索する

Resource Library | ICNC – International Center on Nonviolent Conflict

非暴力抵抗運動を研究している国際NGO、International Center on Nonviolent Conflict のウェブサイトです。何百もの文献がフリーで公開されており、学部生の研究程度であれば、先行研究はこちらの論文から探せば十分でしょう。

【使い方】 左側のフレームのFORMATから”Academic Article”と”Book”だけをチェック入れれば、学術文献に絞って検索することができます。

核になる文献:その1(理論)

非暴力抵抗運動研究のゴールド・ロジャーといってもいいくらいの重要人物、故ジーン・シャープ氏による大著です(わかる人だけわかってください)。非暴力抵抗運動研究の原点はここにあります。非暴力抵抗運動にとっての旧約聖書と言ってもいいでしょう。いたるところで引用されており、同分野の全てを基礎付けている文献です。ちなみに私は引用で内容をつかんでいるだけであり、原本は読んだことがありません笑(そのうち読みます…)。

核になる文献:その2(実証)

Why Civil Resistance Works: The Strategic Logic of Nonviolent Conflict (Article)

2018年現在、非暴力抵抗運動の実証研究で最重要なのがこの文献です。非暴力抵抗運動の新約聖書といってもいいでしょう。それまで、論理的説明や少数の事例の比較などによって推測されていた「非暴力の方が暴力より強いのではないか?」という仮説を、広範囲のデータ分析によって実証した初めての本です。1945~2006年までの全ての非暴力闘争と武力闘争を調べ上げ、「暴力と非暴力」および「成功した非暴力と失敗した非暴力」について徹底的なデータ分析および事例分析を行っています。同分野の研究をするのであればとりあえず一読はするべきでしょう。

この論文は拡張されて本にもなっています。こちらは論文と違ってフリーで公開はされていませんが、大学の図書館などで探したら見つかるかもしれません。

事実を見る(事例検索・データ)

非暴力抵抗運動の事例を探す:その1

事例を探すにはこちらのサイトが一番良いでしょう。

Advanced Search Cases | Global Nonviolent Action Database

“Location”(場所)、 “Date of Campaign”(日付)、 “Categorization of Campaign” (運動の分類)”Campaign Success Scoring”(成功度合い)などの条件で絞り込むことができます。日々更新されており、有史~2017年までの1179の事例が掲載されています(2018年4月16日現在)。

また、成功度合いを10段階で評価していますので、そのままデータセットとしても使うことができます(条件を絞って、成否の分布を見たりなど)。

非暴力抵抗運動の事例を探す:その2

Waging Nonviolence – People-Powered News and Analysis

事例を探すのであればこちらも有効です。多くの事例について、ニュースレポートに近い形でまとめてあります。

非暴力と暴力を比較する

NAVCO Data Project | University of Denver

非暴力抵抗運動の研究で今間違いなく最強の人物、米デンバー大学エリカ・チェノウェス先生を中心にまとめているデータセット。武力闘争と非暴力闘争の両方をまとめているのが特徴です。暴力と非暴力の比較を行いたい場合には基本的にこのデータセットを使うことになると思います。

去年私が使っていた時点ではver2.0で、2006年までのデータしかなかったのが弱点でした。今見てみたら2012年まで入っています。上のGlobal Nonviolent Action Databaseに比べれば情報は古いですが、アラブの春(2011年)が入ったのはかなりありがたいところです。

重要な事例

以下、非暴力抵抗運動の勉強・研究をするにあたって重要だと思われる事例を紹介しておきます。完全管理人の独断と偏見による選定です。かつ、私が去年調べていた“1945年以降”“政治体制変動を求める運動”に偏っています。もっと古い事例や、別の目的で行われた事例(植民地支配に対する抵抗など)については詳しくないので触れていません。あくまで参考程度に。

(それぞれの事例について、前述のGlobal nonviolent Action Databaseの各記事へ飛ぶリンクを貼っておきます)

ピープル・パワー@フィリピン(1986年)

近年の非暴力革命における代表的な成功例です。武器なき民衆の抵抗が独裁政権を倒す決め手となったということで、後述の東欧革命にも影響を与えたといわれます。

Filipinos campaign to overthrow dictator (People Power), 1983-1986

天安門事件@中国(1989年)

一方、こちらは代表的な失敗例です。学生が民主化を求めて北京の天安門でデモを起こしましたが、共産党直属の中国人民解放軍によって暴力的に制圧されました。多くの国で、こうした民衆の運動が民主化を成功させているのに対し、なぜ中国では失敗したのか。という問いをたてて研究しても面白いかもしれません。まあ、ほぼ答えは出ちゃってるんですけどね(笑)

Chinese students campaign for democratic reform (Tiananmen Square), 1989 | Global Nonviolent Action Database

東欧革命(1989~1991年)

冷戦終結を象徴する出来事の一つです。東側陣営として共産主義政権が統治していた東ヨーロッパ諸国(ポーランド、ハンガリーなど)において、デモやストライキといった民衆の非暴力運動を通して民主化が実現されました。ほぼ完全に無血で成功した運動として知られています。非暴力抵抗運動とはいっても、一部の民衆が暴力を振るうことがありますし、また警察から民衆への武力弾圧もあるので、しばしば死者・負傷者を伴います。ですが、この東欧革命で民主化した各国では、ほとんど血が流れずに体制移行が成功しました。あ、ルーマニアは例外です。

Browse Waves: Soviet Bloc Independence Campaigns (1989-1991) | Global Nonviolent Action Database

色の革命(2000~2006年)

中・東欧や東アジアの旧共産圏(ウクライナ、キルギスなど)で起きた一連の非暴力革命です。特に、セルビアのブルドーザー革命については、前述のジーン・シャープ氏の書籍を読んで非暴力の戦略を勉強してからそれを実践したということで、理論がどのように応用されたのかを観察するにも良い事例だと思います。

Browse Waves: Colour Revolutions (2000s) | Global Nonviolent Action Database

アラブの春(2011年)

アラブ世界(チュニジア、エジプト、リビアなど)で近年起きた一連の非暴力革命。SNSが大きな役割を果たしたことで有名ですね。革命後の国内情勢が安定した国と逆に不安定化した国に別れてしまったので、その違いを運動のプロセスに見出せると面白いかもしれません。

Browse Waves: Arab Awakening (2011) | Global Nonviolent Action Database

おわりに

今回は非暴力抵抗運動を研究したいと思った人がスムーズに先行研究や事例を探せるように、使える情報をまとめてみました!また何かいいサイトなど見つかったら随時更新していきたいと思います!


最後までお読みいただきありがとうございました!記事の更新等はTwitterでお知らせしていますので、よろしければフォローお願いします!→ @academicocktail

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